クラシックホテルを創業するに至った想いや歴史を紡ぐ「クラシックホテル展」

Daisuke Hayashi
ProjectDD
Published in
4 min readFeb 9, 2020

--

2020年5月31日まで、東京・天王洲アイルの建築倉庫ミュージアムで開催されている「クラシックホテル展 — 開かれ進化する伝統とその先」に行ってきました。

日本のホテルの原点ともいえるクラシックホテルを象徴する12のキーワードを通じて、創業から未来へ向かう時間を体感して頂く展示となっております。
クラシックホテルは創業者やホテルを取り巻く人々の強い想いや思考とともに、今日まで生き続けています。

日本を代表する12のクラシックホテル。展示されているのは写真はもちろん、図面、長年ホテル空間を演出してきた家具、そして私が一番くぎ付けになったのがなぜそのホテルが出来上がったのか?の成り立ちでした。

例えば「日光金谷ホテル」。
開国から5年、日光東照宮を訪れる外国人が増えていく中、日光には彼らの滞在先となる宿なかったそうです。当時の日光には外国人を宿泊させるのは良しとしない風潮があったとか。そんななか創業者となる金谷善一郎が外国人を招き入れることがきっかけで、宿を築いたそうです。しかし当初は汚物が撒かれるなど迫害が絶えなかったそうです。

今回展示されている12のクラシックホテルには、それぞれのホテルが必要であるしっかりとした理由がありました。

文明開化を契機に観光の起爆剤として地元を盛り上げるべく多くの外国人を招き入れようとして建てられたホテル。
関東大震災で様々なホテルが倒壊するなかで外国人を救済するために建てられたホテル。
戦後GHQによる接収を経たのち、その建築様式を後世に残すために宿舎から転換したホテル。

展示室に掲げられている写真も、今回の展示のために撮影されたものだそうです。西洋建築の影響を大きく受けたクラシックホテル、その美しいたたずまいにワクワクし「いつか泊まりたい」と思わせてくれます。

一方、箱根の「富士屋ホテル」ではまさに2年間にわたる平成の大改修の最中。地震や天災の多い日本という国で、建築を長く保つというのは困難な面も多いです。外国資本が入ってくるなど、様々な外的影響も受けていくでしょう。それでもこれらクラシックホテルの光景が、この先100年・200年と見られることを、願うばかりです。

今回の展示では、ホテルに実際に置かれている椅子が展示されているのも特徴のひとつです。そしてこれらの椅子に座ることもできます。建築家やホテル関係者のインタビュー映像が流れていますが、この椅子に座ってゆっくり鑑賞できるのも嬉しいですね。

クラシックホテル展に展示されている建築模型は「ホテルニューグランド」の1点のみ。建築倉庫ミュージアムで開催しているのでクラシックホテルの建築模型を期待すると少し残念なところもあります。でも、それをもっても余るほど魅力がある展示になっていると思います。

私はこれらのクラシックホテルに泊まったことはありませんが、いつか泊まってみたいと思わせる、そんな展示でした。

--

--