言葉に踊らされるインスタレーション「最果タヒ展」

Daisuke Hayashi
ProjectDD
Published in
Dec 4, 2020

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2020年12月20日までPARCO MUSEUM TOKYOで開催中の「最果タヒ展 — われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。」を見に行きました。

会場にあるのは、作品があなたに読まれ、初めて意味を持つものであってほしいと願う、最果タヒによる「詩になる直前」の言葉たち。
それらを追いかける体験を通して、自分の心が動く言葉やその瞬間、あるいは目が無意識に読んでいる感覚に気づくような、言葉との新たな出会いが生まれるでしょう。

会場内には最果タヒさんがつむぐ「詩になる直前」の言葉が並んでいるのですが、むしろ展示デザインを担当された佐々木俊さんとの「詩や言葉の、無限大の表現方法を探るインスタレーション展」と言った方がしっくりくる…それくらい言葉の表現方法のバリエーションに触れることができる展示になっています。

「詩と身体」

複雑に入り組む造形に詩が刻まれている作品。

ここに書かれている詩を読もうとすると、人間は造形にそってカラダをよじらせ、動き回り、首を傾ける必要があります。詩をのぞき込む姿は、ハタから見ると奇妙だったかも。

なんというか “言葉に踊らされる” という表現がしっくりくるような、言葉の持つチカラに時に人間は無力になってしまうかもしれない…そんなことすら感じさせられる作品です。

「ループする詩」

外からだと、ループの内側に書かれた詩はまったく見えないか、ほんの一部しか見えません。いざループの中にカラダをいれると、ようやく詩の全貌があきらかになります。

と思いきや、今度はその詩がどこから始まっているのかがわかりません。
「この詩はどこから始まるんだ?」ループという形態の罠にかかるわけです。スタート地点を探しに、人間はクルクルまわります。頼りはマル…そう、句点(。)です。マルを見つけ、詩を読む時、人間はまたループの中でクルクルとまわるのです。

ちなみに…句点(。)のない詩を見つけた時は、絶望的な気持ちになりました。

「詩になる直前の、渋谷パルコは。」

展示スペースいっぱいにぶら下がった無数のモビール。モビールには、詩になる直前の無数の言葉が並んでいます。しかも両面に。そしてモビールの回転により、言葉と言葉が奇跡的な遭遇をする瞬間が訪れます。

「きっと消え失せて、…オールOKだった。」
「あなたが隠すものが見える気がして、…わたしの愛を無駄にしないで。…楽しいだけのあなた」

最果タヒさんも予測することができない、無数の言葉の組み合わせが生まれていきます。

「詩っぴつ中」

最果タヒさんがスマホで詩を書かれるとのことなので、その様子をムービーに収めた作品だと思うのですが、これもまたひとつの詩の表現方法として作品になっています。

高速のフリック入力から生まれる言葉の数々。ときに時間が止まることで思考の様子がうかがえたり、大胆にDeleteで言葉が消されたりすることも。

ここまでくると、画面が割れていることにも、充電の残量が極端に少ないことにも「なにか詩と関係しているんじゃないか?」と思わせてしまうほどです。

最果タヒさんの詩に興味がある方はもちろん、言葉の表現の可能性に触れたい人にもおすすめの展示です。

詩ょ棚
詩の存在

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